ーーー暑い夏が過ぎて。
長月も後半になろうとしているのに、厳しい残暑はそのまま。
渉とは、あれからー…アメリカへ行く話をたくさんした。
行き先は、師匠と師事して尊敬するSHOYAさんの居るラスベガス。
俺の所に来い、と相談と決意を伝えると言ってくれたらしい。
そろそろ、美希さんにも相談しなくてはいけないし。
渉は、渉で片付けなければいけない事。
仕事がたくさんある。
『春になったら、後悔もなく行けるように準備しとかないとな』
昨晩、渉はそう言って。
伊織は何もしなくても、ただ着いて来てくれるだけでいいから。
なんて言ってくれたけれど……そうは私の気持ちと身体が許さない。
今、伝えても渉は首を縦には振らないだろうから……きちんとラスベガスで働ける場所を見つけてから、伝えよう。
「美希さん!?相談があるんですけど……」
アシスタントのレッスン終わり、高山さんも残っていたスタッフルーム。
ん?なにかあった?
綺麗な微笑みを向けて、振り向いてくれた美希さんに。
渉と来年の春にラスベガスに行く旨を伝えた。
「……そう……寂しくなるね……伊織ちゃんが決めたのなら、行ってらっしゃい。向こうでの働き先を探すのは大変でしょ?高山!伊織ちゃんの面倒見てあげてくれる?」
訳もわからず、高山さんに視線を移すとーー備品の在庫整理の手を止めて。
俺も春にラスベガスへ行くんだよ、と。
ラスベガスのホテルに隣接するショッピングモールのシアターの、メイクアップアーティストとして呼ばれたんだとか。