社長はお隣の幼馴染を溺愛している
「これくらい優しいほうだぞ」
「ど、どこがよ!」

 要人の言葉に同意なのか、朝比さんは涼しい顔で、お茶を飲んでいる。
 若いのに落ち着いていて、まだ勤務中ですからと言って、アルコールは一切口にしない。
 見かけどおり、真面目な人だった。

「私は明日からどうしたら……」
「俺の秘書として働けばいい」
「お断りよっ! 二十四時間、要人と一緒にいたら、私の寿命が縮むわ!」
「二十四時間一緒に……。なるほど。俺と一緒に住みたいという遠回しな誘いか? 引っ越すつもりでいたけど、まさか志茉から……」
「違うっ! 今のはちょっとした言い間違いよ。わかってるくせにっ!」

 ただでさえ、減っていた体力が、このやりとりで、一気に消耗された気がする。
 
「ですが、経理課の仕事が滞るのは困ります。倉地さんがいては、仕事に集中できないでしょう」

 今日の騒ぎを目の当たりにしている朝比さんに言われると、私も強く言えなかった。
 愛弓さんが騒ぎ、経理課に迷惑をかけてしまったのは事実で、経理課だけでなく、他の課にまで影響が及んだ。

「まさか、要人。こうなることをわかってて、愛弓さんを放置していたんじゃないでしょうね!」
「俺がそんなこと……するわけないだろ?」
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