社長はお隣の幼馴染を溺愛している
 ――やっぱり私は要人にとって、足枷でしかない。

 要人の両親が、私を嫌がるのも当然のこと。
 なんとなく息苦しく感じて、車の窓を開けると、冷たい風が入り、風で髪がなびいた。 

「なあ。今週末、どこか行くか?」
「今週は予定があるから」 
「そうか」

 要人はそれ以上、なにも聞かず、どちらも話さないまま、車はアパートに到着した。
 私のアパート前で、車を止める。

「要人、送ってくれてありがとう。でも、そのヤクザみたいな服装は二度とやらないでね」

 次は間違いなく、職務質問を受けるだろう。
 お店の人も怯んでいたし、常連じゃなかったら、店内に入れてもらえなかったかもしれない。
 要人は気に入っていたのか、ちょっと残念そうに、サングラスを眺めていた。

「じゃあ、要人。明日から社長の仕事、頑張ってね」
「志茉」 

 立ち去ろうとした私を要人は呼び止める。
 要人は私の腕を掴み、二度目の宣戦布告をした。

「志茉。俺は本気だからな」

 低い声と大きな手――要人は少しも笑わせてくれなかった。
 今まで一定の距離から、要人は踏み込まず、隣の幼馴染であり続けた。
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