社長はお隣の幼馴染を溺愛している
 幸せそうに見えたお隣のお屋敷だけど、中身は違っていた。
 ずっと要人は孤独で、私たちの暮らすアパートへ来ていたのは、私と同じ。
 一人になりたくなかったからだ。
 私の目から、涙がこぼれた。

「仁礼木の家に呼び出されて……。要人に言ったら、アパートから出ていってもらうって言われたの……」

 高校生で保証人もいなかった私は、住んでいたアパートを追い出されれば、どこにも行くあてがなかった。
 それをわかっていて、要人の両親は私に言ったのだ。

「要人と絶対に恋人関係にならないって、約束をさせられて、誓約書にサインした……。それが、私が要人のそばにいて、いい条件だったから」
「誓約書……。高校生の志茉相手にか」

 要人の表情が、歪み、怒りで声を震わせた。
 私の隠してきたことを知った要人は、悔しそうに拳を握りしめていた。

「要人も大学生だったから……。どうにもできないわよ……」

 無力だったあの頃。
 両親が亡くなった時、私はまだ高校生で、要人も大学生だった――
< 73 / 171 >

この作品をシェア

pagetop