世話好き女子がクーデレ男子を愛育した結果

助けてって言えよ




 ──7月頭、総一郎を見送り家を出たあかりは、マンションのエントランスを抜けて目を細めた。



「今日も暑い……」



 季節は初夏。朝からじりじりと日差しが照り付け、コンクリートの地面が揺らめいている。あかりは駐輪場で自転車のストッパーを外し、それに跨った。


 暑いからさっさと行こうと自転車を漕ぎ出すと、ぬるい追い風が背中を押す。


 住宅街を抜け商店街を抜け、もうすぐ学校だというその時、道路沿いのバス停に座り込むスーツ姿のサラリーマンが目に入り、あかりは思わず自転車を止めた。


 そのバス停には日除けになるものもなく、ベンチさえもない。



「あの、大丈夫ですか?」



 あかりが声を掛けると、サラリーマンは膝に埋めていた顔をゆっくりと上げる。顔が真っ赤で、息が荒い。



「熱中症だ……!」



 あかりは焦りながらもすぐに自転車にストッパーを掛け、サラリーマンの肩を支えゆっくり立ち上がる。そして近くにあった建物の日陰に移動した。

 



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