もふもふになっちゃった私ののんびり生活 ~番外編

私が生まれた日(セフィー)書籍版発売記念SS

書籍『もふもふになっちゃった幼女薬師ののんびり異世界生活~最強の加護を受けているので二度目の人生は無敵です~』(改題)の発売を記念して、セフィーのルリィへの想いを語ってみました!
書籍版は改稿し、更ににもし様のとってもかわいいルリィのイラストがついていますので、
(ルリィが転ぶ姿をできたら漫画で見たいと思うのは私の我儘ですかね)
良かったらお手にとっていただけると嬉しいです。



 私が精霊樹の中で自我を得たのは、神から連絡を貰い、結界を張った時でした。
 何千年とこの地にある精霊樹でも、神から連絡があるなど、創生期以来のことです。その為、その対象となった他の世界からの転生をしたというシルビィーの幼子に興味を持ったのです。

 ずっと結界の端にあった気配が動き、こちらへ近づいて来るのに気が付いた時、ハッキリと意識が浮上したように思います。
 幼子故か、遅々とした歩みでしたが近づいて来る気配を今か今かと待ち構えていました。
 幼子が夜うなされていた時は、そっと癒しの魔法を贈ったりもしましたが、それだけ楽しみだったのです。

 そしてついにその幼子が精霊樹の元へ辿り着いた時、私のことを目的地として移動して来たと知り、うれいく思いました。
 間近で見た幼子は本当に小さく、見上げ過ぎてコロンと転がった時には、幼子を見守るだけでなく、直に接してみたいと思い、精霊樹の精として誕生する準備に入りました。

 私の体に抱き着き、初めて人化して頭から転がりそうになった時など、支える手を持たないことを残念に思った自分に、自身で戸惑った程です。

 ですが、そうはいっても創生期から存在している精霊樹です。精霊としての身体を生み出すにも、逆に強大な魔力が枷となり、何年もかかることでしょう。
 年月は私にとって今までは過ぎ去る物で、時間を意識したことなど無かったのですが、毎日のように私の元を訪れては私に抱き着き、魔力を循環させて癒しとしている幼子を見ていると、一刻も早く言葉を交わしたいと思ったのです。

 これだけ時間が過ぎ去るのを遅いと感じたのは初めてのことで、幼子を見て次々と浮かび上がる感情を新鮮に思いつつ、幼子を毎日ずっと観察していました。

 毎日丘を登って来るのに、一度は毎回転んで転がります。
 コロコロと丘を転がり落ちて行った時など、ここに悪意ある生物を寄せ付けない結界を、と望んだ神の慧眼に、感嘆の念を抱きました。

 この幼子、神から真名を賜り、ルリィという呼び名を自分でつけた子は、魔獣だというのに欠片も野生が無かったのですから。

 ふんふんと匂いを嗅ぎながら歩けば、それ以外の気配には全く気付かず、一度などすぐ近くの草むらを野ネズミが走り抜けて行ったことにも全く反応しませんでした。
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