シングルマザー・イン・NYC
「いや、そこまでじゃないと思うけど。篠田さんが希和を気に入ったのは、俺は見てて分かったよ。希和が超美人じゃなくてもさ、一応はかわいいし、気遣いができるだろ。大人しそうでいて、自分のペースを崩さないし。たぶん、そういうところが好きなんだよ。あまり周りにいないタイプだったんじゃない?」

「……私といると調子が狂うって言ってた」

「それはいい意味。自分のペースを乱す興味深い女って思ってる」

「そうかな」

「間違いない」

「じゃあなんで、さっきみたいなこと言ったの?」

「住む世界が違い過ぎる、というのはあるかなと思って。お互いの仕事のこととか、ほとんどイメージないでしょ。それに篠田さん、最終的には帰国しちゃうんだよね? その時、希和はどうするのかなって。そう遠くない将来の話になるだろうから、それまでに、結婚まで話がいかないと、ニューヨーク・東京間の遠距離恋愛は大変かなと」

耳の痛いアドバイスだった。

常に冷静沈着な思考回路の男・アレックス。
恋バナから状況を分析して的確なアドバイスをくれる。

「いつもありがとう」

私はつい、アレックスをギュッとハグした。

「大切な友達だから、当たり前」

アレックスが照れくさそうに笑いながら、ビール瓶をテーブルに置いてハグを返してくれた。

「何があっても俺は希和の味方だけど、もし辛くなったら、あまり無理すんなよ」

「わかった」
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