シングルマザー・イン・NYC

樹さんの部屋で

樹さんの部屋に着いても、慧はぐっすり眠ったままだった。

「完徹したようなもんだからな。徹夜明けで本格的な眠気がやってきて、熟睡なんだろう。あと十時間くらい眠るんじゃないか?」

「そんなに?」

「うん。でもいいんじゃない、寝かせとけば。明日の朝に目覚めれば、時差ボケも直ってそう」

確かに。

私はぐるりと周囲を見回した。
ヴィンテージマンションの十一階。

私たちは今、樹さんの部屋の玄関に入ったところだ。

廊下が左右に伸び、それぞれの突き当りにドアがある。
そして、私たちの正面にもドア。
樹さんは、そのドアを開けた。

「――ここはリビング」

まず目に入ったのは、大きくて居心地の良さそうなソファ。

「ベッドになるから、慧はここで寝かせよう」

樹さんは慧をそっと降ろすと、ソファの背もたれを倒して平らにした。
そして、ソファの端に畳んであったブランケットを広げると、慧にかけてくれた。
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