タクシーを降りると目の前に広場があり、そのさらにその前方にはリンカーン・センターがそびえたっていた。

前面はほとんどがガラス張りで、建物内に灯るオレンジ色の明かりが美しい。
左右の壁にそれぞれ、大きなシャガールの絵がかかっているのが見える。

吸い込まれるようにリンカーン・センターに入っていく人々は、普段着だったり、明らかに観光客とわかる服装だったり、美しくドレスアップした女性と彼女をエスコートしている男性など、多種多様。

日本で例えるなら、歌舞伎座の客層に似ているだろうか?

「すごい。おしゃれな人は本当におしゃれ」

「うん。でも希和もいい感じだよ」

「篠田さんも」

「俺は普段着。っていうか、仕事の時はいつもこんな感じ」

篠田さんは濃紺のスーツにごく薄い水色のストライプのシャツ、紫のネクタイ。
私はリトル・ブラック・ドレスに、髪を自然の感じのアップにまとめた。