シングルマザー・イン・NYC
するとそこには。

「名門政治家一族・篠田家の跡取りで国際弁護士の篠田樹氏(三十一)、ニューヨークで恋人にプロポーズ」

という見出しと共に、篠田さんが私にプロポーズしたあの場面が、大きく表示されていた。

有名なゴシップ誌に写真を撮られ、それが明日発売されるというので、父親に連絡があったのだそうだ。

政治家で篠田と言えば――。

電話が終わった後、私はきいた。

「篠田さん、さっきのお父さんて、大臣だった人じゃ……」

私が渡米する前、たまにテレビのニュースに映っていた。

「うん、そう。よく知ってるね」

「なんで黙ってたんですか?」

「なんでって……特に理由は。親父の話する必要なかったし」

「その写真、まずいですよね……?」

「別に。親父は怒ってたけど」

「なぜ?」

「まあ、色々としがらみが……希和は気にしなくていいよ」

しがらみ。

なんだろう。

妙な胸騒ぎがした。
< 48 / 251 >

この作品をシェア

pagetop