シングルマザー・イン・NYC
翌日、アレックスと私はプラヤホテルのローゼンタール夫妻の部屋を訪れた。
そこでカミーユさんと夫のデイビッドさんに会い、話し合った結論を伝えた。

「いいわよ、共同店長で。うん、あなたたちならその方がいいかも知れないわね。ではあらためて、よろしく。キワ、アレックス」

「こちらこそ、よろしくお願いします。オーナー」

私たちはシャンパンで乾杯した。
久々に飲むシャンパンは――もちろん最高級なのもあるのだろうが――とてもおいしかった。

こうして私はケイ・タカヤナギへの復帰を取り止め、カミーユさんのプライベートサロンの開店準備に入った。

場所はアッパー・イーストサイド。
METのすぐ近く。
いい場所だ。

そして生活の便を考え、引っ越しも決めた。
アッパー・ウェストからアッパー・イーストへ。

セントラルパークを挟んでちょうど反対側の場所にいいアパートが見つかったので、今の部屋の更新のタイミングに合わせ、アレックスと一緒に引っ越すことになった。

これで、もし篠田さんが私に会いに来ても見つけられなくなってしまうな――そう思ったことは、アレックスには黙っていた。

ずっと連絡もないのだし、まさかニューヨークまで会いに来るなどということは、起こりえないだろう。
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