〜お弁当〜
〜父〜
 父の仕事柄、鍵っ子だった私はいつも自分で鍵を開けて家に帰っていた。
学校から帰ると、私はいつも自分でお弁当箱を洗って父の帰りを待っていた。
父のある言葉がいつも聞きたかったから。

 「おー、洗ってくれたのかー、えらいなー、ありがとな。」

その時抱きしめられている私は、父のお腹辺りから見上げて父の笑う顔を見ながら私も笑っていた。

 ある時から、父は手紙に私が読めない字を書くようになった。
 「手あらったか?」
 「気をつけてあそべよ。」
 「しっかり食べろよ。」
私はそれから、毎日食べる前に先生のところまで行くようになった。
「せんせー、これ、なんて じ?」
「・・・ふーん、そっかー、わかったー。」

「パカッ。」
玉子焼き、からあげ、ソーセージ、、、

そんなお昼が当たり前になった。
次第に私も字を覚えて、先生のところまで行く回数も減っていった。
私に勉強を教える間が少なかった父には、それが父なりの私への宿題だったのかもしれない。
 
 ある日、父からこう言われた。
「来週の一週間は、あじいちゃんちに泊まりな。パパは仕事で遠くに行くからな。」
 次の週から父のお弁当も無く、父の顔も見れないで学校へ通った。
お弁当は祖母が作ってくれた。
 手紙は・・・ない。

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