〜お弁当〜
〜出来事〜
 父の言っていた一週間が過ぎたころ、父は言っていた通り帰ってきた。
今まで通りの父との生活が始まった。
そんな生活が再開して間もないいつものお昼、手紙に、

 「ごめんなこんなお弁当で・・」
と、書いてあった。
私はなぜだろうと思いながらもいつものように

「ぱかっ。」

なんとなく分かったような気がした。
私も高学年になっていたので、だいたいの物事の判別ができるようになってきていた。子供なりに。
明らかに手の抜いてあるお弁当だった。
けれど私は、文句を言わずにいつものようにお弁当箱を洗った。
父は何年も作り続けて毎朝大変なのは分かっていた。
それから変な手紙が続くようになった。
 「しんどくないか?」
 「勉強分かるか?」
 「友達とは仲良くしろよ。」
私のを気遣うような内容が多くなった。
そして・・・

「お弁当おいしかった?」

これが、父の最期の一言手紙になった。

静かに教室の扉が開き、私の祖母が現れた。
祖母は教室の扉の影から私の先生を小さく呼んだ。
そして先生と祖母が少しの間話していたかと思うと、先生から呼ばれた。
そして、先生の不機嫌そうな顔と元気のない顔の祖母に私は挟まれて、
祖母から聞かされた・・・

「おとうちゃん死んじゃったんだよ・・・今すぐ帰るから用意しなさい。」

その時、先生の顔を見た時、先生の不機嫌そうな顔の理由が分かった。
不機嫌じゃなくて、悲しい顔だと。
それと同時に、私を気遣うよな内容だった手紙の意味も。
 
 そして、父からの最後の手紙が私に聞きたかった答えも・・・

「すごくおいしかったよ・・・いつもありがとう。」
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