エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
エピローグ

鯉のぼりが悠々と空を泳ぐ頃。

香坂家では夫婦が育児に奮闘中である。

「やっと寝てくれたか……」

双子のひとりを抱っこした雅樹が、リビングのベビーベッドに向かう。慎重に寝かせてフウと息をついたら、隣のベッドでもうひとりが泣き出した。

「もうミルクの時間か? やれやれ。双子育児は休む暇がないな……」

友里と双子が退院してから今日で二週間が経つ。

雅樹が家政婦とベビーシッターを雇ってくれたので、友里は無理なく育児を楽しめている。

しかし今日のような雅樹の休日は、夫婦だけで協力して頑張ろうと決めていた。

双子の名前は、男の子が日向(ひなた)で、女の子が日葵(ひまり)。

明るい家庭にしたいと夫婦で考えた名だ。

友里は急いでミルクを作り、泣く子のもとへ走る。

「日向はお腹空いたのかな? オムツを替えてミルク飲もうね」

ベビーベッドの柵を下ろしたら雅樹の手が伸びて、友里の手から哺乳瓶を抜き取った。

「俺がやるよ。友里は休んでくれ。産後の君の体も心配だ」

「大丈夫ですよ。もう傷も痛みませんし、さっき少し眠りましたから。ずっと日葵ちゃんを抱っこしてたのに、雅樹さんの方こそ休んでください。明日のオペに差し障ります」

お互いを気遣う夫婦だが、寝かせたばかりの日葵までふぎゃふぎゃと泣き出したので、その必要はなくなる。

< 119 / 121 >

この作品をシェア

pagetop