蒼月の約束
第五話
その日も、部屋にいたら気がおかしくなると、朱音は気晴らしの為に宮殿内を散歩していた。
すると、ふと話声が聞こえた。
ちらりと後ろを見ると、数歩あとをついてきているエルフたちは未だ下を向いている。
スピードをゆるめ、声のする方へと向かっていく。
「本気ですか、王子?」
いつもしか目っ面をしているの側近の声だ。
その横には、同じく顔をしかめた王子がいる。
耳をそばたてながら、素知らぬ顔でゆっくりと近づく朱音。
「あの娘、まだ身元も、よく分からないのに。新種のドワーフかもしれませんよ?」
ど、ドワーフ?
何。私今、ディスられてるの?
ドワーフと言えば、絵本の中で観たことがある。
小さい体に、大きなひげを蓄えた小人。
「お前も見ただろう。あのペンダントを」
王子が言うのが聞こえた。
朱音は思わず、胸元にかけてある星型のペンダントを触った。
受け取った時以来、王子から身に着けていろと言われ、毎日首から下げている。
「あの、呪われたペンダントは…」
そこで、王子は朱里がそこに立っているのに気がついた。
呪われたペンダント…?
私に着けさせていたのは、呪われたペンダントなの…?
驚いた様子の王子が朱音の後ろのメイドたちに「いつからそこにいた?」と聞いていたが、朱音の耳には入って来ていなかった。