蒼月の約束
第一話
「ただいま~」

2つの声が重なり、平屋の家の前でこだました。
その声を聞きつけた、エプロン姿のお母さんが手を拭きながら、急いで玄関のドアを開けた。

「おかえり~!…あれ、なんで朱音(あかね)はスーツなの?」

朱音は不機嫌そうに答えた。

「仕事してから来たから」

「ねぇ朱音、また太ったんじゃないの?」

話を聞いているのか、いないのか、仕事をしてきたという朱音の言葉を無視して、本人が一番気にしていることを平気で言う母。

「私も思った!お姉ちゃん、また太ったよね~」

朱音と一緒に帰省したのは、5つ下の妹、亜里沙(ありさ)だ。

「またお父さんに似たと思わない?小太りだし眼鏡だし」

軽快に笑いながら亜里沙は家の中へと入って行く。

「本当に、私の遺伝子どこに行っちゃったのかしら…」

お母さんが困ったように言った。

「ほっといて」

妹に続いて、朱音も家の中へと入る。
< 5 / 316 >

この作品をシェア

pagetop