【完結】甘くて危険な恋の方程式〈捜査一課、女刑事の恋と事件の捜査ファイル〉
『遺族の悲しみは、計り知れない』


「つぼみ、もう終わるか?」

「あ、うん……。もうちょっとで終わる」

 辰野のスマホを調べた所、差出人は海外のサーバーの経由しているのか、結局分からなかった。
 そして辰野はその後、証拠不十分のため不起訴になり、その日の夕方門野さんによって釈放された。
 辰野の署を出て歩いていくその姿は、なんとなく悲しそうにも見えた。

「日向、お待たせ。終わったよ」

「よし、帰ろうか。つぼみ」

「うん」 

 そんな複雑なわたしの心を救ってくれるのは、日向だ。
 辰野の一件で、わたしは少しメンタルをやられてしまったのだ。 辰野の壮絶な人生は、昔のわたしにも同じように当てはまるから、他人事のようには思えなかったのだ。

 辰野もあの時、門野さんの前で泣いていた。だけどそれは同時に、辰野が今まで感じていた警察への恨みだけじゃなかった。
 辰野は門野さんの優しさに、門野さんの言葉に、胸を打たれたからでもあったのだ。
 ……そう。辰野のことをどこかで信じていたのだ、門野さんは。その想いが、辰野にも伝わっていたのかもしれない。

「腹減ったな〜。何か食べて帰るか」

「そうだね」
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