はぁ?





口を開いたと思ったら、何を言いだすんだ狭山。





「女の子はさ、みんな男の前になると、必死に取り繕うとするけれど、ありのままの姿で、俺いいと思うんだよね。男って、女の子のすっぴん好きなんだよ?結構。それにぽっちゃり体型でも、結構好印象なのに」







それ、全然っ、説得力ないから!!伽耶と私の方を見ないように言ってるし。その理論が正しければ、伽耶と私、彼氏できてると思うんですけど?




「みんな女の子はプリンセス。男から愛される存在。何もせずとも、男から支援を受けられる特別な存在なんだから。そんな素材を取り繕うなんて勿体無い」




周りのみんなは、「またまたそんな事をー」みたいに笑ってみせた。伽耶と私という存在は、論外として、なかったように笑っている。目を合わせようとしないし、消えてもいいと言った様子で。本当、嫌なクラスだ。


「本当にそうなの?あなたがそう思っているだけで、みんなはそう思ってないんじゃないの?」なんて思う人もいると思う。



なら、その証拠を見せてやろう。


私はチラリと男子の目を合わせるように仕向ける。眼鏡をかけた冴えない男の子。瞬間、男子はフッと目線があう。




次の瞬間、フッっと目線を逸らした。


ほら?



ね、嘘じゃないでしょ?



幻影でもない、私はこんな身近な男の子でも避けられるそんな「キャラ」。



「俺、いいこと言ったでしょー。スゲーだろ」って顔してる狭山先生も、私と伽耶を下に見るクラスメイトも嫌うよね。こんな調子じゃ。



そう思う、冬の十二月。クリスマスの一週間ぐらい前だろうか。辺りには雪がしんしんと降っているこの季節。私は長い長い、溜息をついた。

❤︎




「あー、終わった。終わったーっ!!」





五時間目が終わり、急遽職員会議があるという。そんなこんなで、今日は早く帰ることが出来る日。





多くの生徒たちは、部活に励み、帰宅してそれぞれの時間を過ごすのだろう。





そんな生徒達を置いて、私と伽耶は保健室に直行して、優しい保健室の先生、愛野葉山(あいのはやま)先生に愚痴りに行くのだ。





「あらあら、また何かあったの?」




愛野先生は、メガネをかけていて、三つ編みで髪を纏めている、朗らかな先生だ。女性ならではのほんわかした優しい先生。




私達二人は、保健室にあるテーブルの椅子に腰掛けて、愚痴る。




今日あったこと、全てぶちまけても、やはり沢山の生徒を相手にしているのだからだろう。愛野先生は、嫌な顔一つせず聞いてくれた。





「本っ当あの先生なんなの!! 結局可愛い女の子にチヤホヤされたいだけじゃないっ!!チヤホヤされたいから、綺麗事をぶちまけて、「ブスも優しく出来る俺って凄いでしょ?」って言いたいだけよっ!!」





私は、頭に血が上りながらその事を、愛野先生にぶつける。自分でもこんな感じでぶちまけるなんて、良くないとは分かってる。でも、今日は違う。明らかな、嫌がらせだ。伽耶と私にとっては、セクハラ以外の何物でもない。




本人が自覚していないっていうのが、1番厄介で、問い詰める事が出来ない。あーあ。本当、この学校を辞めて仕舞えばいいなあ。狭山なんて。






「あらまぁ、そんな事を言うの?狭山先生……以外に普通の優しい先生かと思っていたのに……」




愛野先生は、眉を下げながら「それは、大変ね」と付け加えた。


「いやいや、あいつは人を見て態度を変えるから、可愛い愛野先生には見えないようにしているんですよ」なんて言おうとしたら、伽耶に止められた。


「まぁ、まぁ。落ち着きなって。摩耶。私、あんな風にされるの一回だけじゃないし、狭山は子供なのよ。逆にあんな男こっちから願い下げだわ」



伽耶は、「全然気にしてないよ」とフォローした。




……気にしてないわけない。男子からあんな冷たくされたら、私だったら発狂してる。冴えない男の子に目を逸らされただけの自分が、すごく傷ついたのだから。



この優しさは、強がってるんだ。「本当にそう思ってない」なんて、思わないようにしよう。


「伽耶ちゃんは、大人なのねー。私尊敬しちゃうわ。私だったら、絶対不登校になっちゃう」




そんな愛野先生は、私達二人に、暖かいお茶と、和菓子を差し出した。




「はい。戦ったご褒美」




お茶は、薄緑色をした緑茶。和菓子は、沢山のあんこが入った大福餅だった。




「わぁっ!! 愛野先生、ありがとう!!」

伽耶は嬉しそうに、目をキラキラさせながらそう言った。

伽耶は甘いものに目がない。特に和菓子となれば、たくさんのお店を知っているぐらいだから当然だろう。





私も、愛野先生にもらった和菓子を頂くことに。大福餅を一口食べる。あんこの独特の香りと、甘すぎないあんこ、餅が下で絶妙に混ざり合う。





それを緑茶で流し込む。苦い緑茶の味を緩和してとっても美味だ。





「うーん。やっぱ和菓子は最高っ!!世界を救えるぐらい、正義だな。和菓子って」





「何言ってんの、伽耶。和菓子って言っても、日本ぐらいしか売ってないのに」




「私が幸せなら、世界一なの」





よく分からない、理論をかます伽耶。自分で、こうして機嫌を直せる性格は伽耶の強み。




それに加えて、私は「世界一の和菓子」を食べたのにもかかわらず、まだちょっと不機嫌。もちろん、顔には出さずにはいるが。





「……あっ!!もうこんな時間だっ!!伽耶、ごめん私先帰るね」





そんな穏やかな時間を過ごしている時、伽耶がガタッと音を立てて、立ち上がったのだ。





「用事って?」






「私、今日から和菓子屋でバイトすることにしたんだー。だから早くそこに行かなきゃ。ごめんね。じゃあね愛野先生っ!!」





そう言って、伽耶は保健室を笑顔で出て行った。いいなぁ……伽耶は好きなことが出来て。



そうして、保健室には愛野先生と私だけになった。





愛野先生は、自分のコップに緑茶を注ぎ、啜る。





女性の先生だけど、まだ私は「先生」という存在に抵抗がある。




まだ、完全に信じてるってわけじゃない。それなのに、こうして頼るなんて、おかしいよね。私。






「摩耶ちゃん」





残った、緑茶を飲み干してそろそろ帰ろうとしていた時だった。愛野先生が話しかけてきたのだ。





まぁ、大体は予想はついている。きっと、「あの事」を言われるんだろう。






「そろそろ、私が紹介した所……行ってみない?」





「紹介した所」……別にこんな言い方したら悪いけれど、頼んでないのに何故こんな事をしてくるのだろう。





「私には伽耶がいます。「そこ」に行かなくても、大丈夫です」