グレイソン伯爵邸別邸の奥、西側のサロンの一つ。

庭園側の一面の窓の向こうからは、広い庭からの午前中の気持ちいい風と、たっぷりの光が注ぎ込んでいた。

そのテーブルの一つにいるリズは、朝から少し機嫌が悪かった。

ジェドたちがいるテーブルからやや離れたそこで、顔も向けず座っている。

「リズ様、いかがされましたか?」

老年の執事サムソンが、彼女の分の朝食後の紅茶セットも運んできた。

「――なんでもありません」

喉にまで込み上げた色々な言葉を、結局はぐっとこらえる形でリズは答えた。サムソンは首を捻りつつも、紅茶を置いて退散した。

彼が退出すると、サロン内にはリズと、そして離れたテーブルにいるジェドと軍服の獣騎士たちだけが残された。庭先から、寝そべったカルロや相棒獣たちがちらりと見てくる。

「早速の、結婚前の苛々期ってやつ?」

ニヤニヤした獣騎士たちのうちの一人が、もしやと推測したことを口にした。今日も彼らの一部は、相棒獣たちと王都を散策予定だった。

「団長、どうなんです?」

別の獣騎士が、ソファの背に腕を回して振り返った。

「今は近寄るな、と禁止令が出た」

「わお。そりゃあ手厳しい」

ジェドは不貞腐れて、ティーカップにも手をつけないでいた。しかし当然の処置であると、リズはその視線にも応えず紅茶で喉を潤した。