朝から、獣騎士団の本館側は忙しかった。獣騎士たちと相棒獣たちが行ったり来たりする中には、リズの姿もあった。

「トナーさん、荷物はこれで全部でしょうか?」

「あーっと、たぶんブラッシング道具が入った鞄がまだ来ていないような」

「一番大事なお道具が……!?」

まだ全部聞き終わっていないというのに、リズが走り出した。相棒獣たちといた数人の獣騎士たちが、止める声も間に合わず建物へと入っていく。

「リズちゃん、ブラッシング道具が一番大事なのか……」

「特注のやつ、給料ほとんど注ぎ込んで三セット買ってたの、びびったわ」

「でもさ、義理でも親子になるのに、団長の両親にねだらなかったのは、リズちゃんらしいよなぁ」

「確かに!」

わははと笑ったところで、高い塀に隔たれた別館側から書類と郵送物を持ってきた職員に気づいて、一人が駆けて向かった。

グレイソン前伯爵考案の特注のブラッシング道具を、このたび個人の懐から三セットも買い、またしても別館職員たちからまで騒がれたのは、獣騎士団の唯一の女性団員、十七歳のリズ・エルマーである。

このグレインベルトではほとんどない春色の柔らかな髪。素直さがうかがえる大きな目は、白獣の瞳の色とよく似た赤紫色(グレープガーネット)だ。

非戦闘団員にして、獣騎士団長直属の幼獣の世話係〝兼〟相棒獣の助手。