平凡な私の獣騎士団もふもふライフ4
三章 リズと魔女の影


グレイソン伯爵家の別邸裏にあるだだっ広い庭は、滞在中の獣騎士団のために提供され、相棒獣のくつろぐ場になっている。

午前中のまだ柔らかい日差しが、その芝生の明るい緑色を映えさせていた。

吹き抜ける風は優しくて、王都の賑わいが遠く聞こえてくる。

【どうした】

カルロが、土の上にガリガリと書いた。

楽しいブラッシング中だというのに、またしても溜息をもらしてしまっていたらしい。向けられている紫色(バイオレット)の目に気づいて、リズは軽く苦笑を浮かべた。

ここは芝生帯に置かれた、相棒獣の世話用の屋根付き場所だ。

余裕をもって作られているのに、通常の戦闘上より一回り大きなカルロが入るとぴったりのサイズに見える。

「……実はね、団長様のせいで心臓がもたないというか」

リズはカルロの前にしゃがみ込み、抱えた膝に額を押し付けた。

王都へはプライベートで来てる。グレインベルトにいた時よりも二人でいる時間も増え、ジェドの愛情表現もかなり増していた。

とにかく熱愛っぷりを隠さない。好きだよと口にし、キスを贈り、今許されている範囲で手や髪に触れ、全力でリズを構い倒してくるのである。

隙あらば胸がバクバクする〝恋人モード〟だ。

昨日聞こえた女性の声も気になったけど、彼に一言で断られるのを想像したら相談なんてできるはずもないし、それを考える暇だってなかった。
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