秘め恋ブルーム〜極甘CEOの蜜愛包囲網〜
Side 翔
◆ ◆ ◆ Side 翔
湯船に浸かり、適温の湯で体がゆるりと緩んだところで、ふっと頬が綻ぶ。
やっと、香月を手に入れた。
欲しくて欲しくてたまらなくて。けれど、彼女の警戒心を煽らないように自重する日々は常に理性を試されているようで、忍耐との戦いだった。
香月の前では自身の醜い欲をおくびにも出さず、それでいて少しずつ距離を縮めるのは簡単ではなかった。どこまでなら大丈夫だろうか……と、彼女の中にあるボーダーラインを常に探ってばかりだった。
恐らく香月自身も、どこまでなら大丈夫か……なんてわかっていないのだろう。
彼女は俺の提案を従順に受け入れながらも、触れ合うときはいつも顔を強張らせ、小さな一歩を踏み出すために必死だった。
そんな姿を毎日見ていれば、まだ告白しようなんて思えなかった。
せめて香月が自分から躊躇なく俺に触れられるようになり、硬い表情を見せなくなるまでは待つつもりだった。
ところが、先日は自ら俺に触れてきたかと思うと、柔らかく微笑んだのだ。それが赤塚のアドバイスだと知ったときは、嬉しいやら落胆したやらで複雑だったが、少なくともそれまでの香月からは想像できないほどの進歩だった。
だから、もう少し待ってから動くつもりだった。
それなのに、彼女は急に出ていくなんて言い出したのだ。
もっとも、香月の主張は至って正常なものだった。おかしいのは彼女ではなく動揺を隠して引き止める俺の方だと、しっかりと自覚もあった。
けれど、ここまで来てそれを受け入れれば、時間をかけて築いてきた香月との関係が振出しに戻る気がして、とにかく彼女をとどめる理由を探した。