秘め恋ブルーム〜極甘CEOの蜜愛包囲網〜

Side 翔


◆ ◆ ◆    Side 翔


高校の同級生の香月と再会したのは、先週のこと。
あの頃、密かに彼女に片想いをしていたのに、俺は最後まで自分の気持ちを伝えることなく高校を卒業し、ずっと後悔していた。


俺たちは、特別仲がよかったわけじゃない。俺は一年生のときから香月のことを知っていたけれど、きっと彼女は俺のことなんて眼中にもなかっただろう。


可愛らしくどこか儚げな香月は、男から見れば守ってあげたくなるような庇護欲をそそるタイプで、入学した直後から一部の男子たちの注目の的だった。『香月志乃は男子が苦手らしい』という噂とともに……。


真実を確かめようと香月に近づき、彼女を泣かせたり怯えさせたりした男子がいれば、たちまち話題になった。
震える香月は、男の庇護欲だけではなく征服欲も刺激するらしく、決して本人には言えないような妄想で盛り上がる奴らを何度も目にしたことがある。そんなとき、俺は決まってバカバカしい……と思っていた。


俺の気持ちが変化したのは、一年生の二学期が終わる頃のことだった。
部活の練習で怪我をして保健室に行くと、保健委員の彼女がいたのだ。


男子が苦手だという噂通り、香月は動揺をあらわにしてぎこちない態度を取り、校医がいないことだけを口にした。怖がらせるつもりはなくても、勝手に恐怖心を感じてしまったらしく、彼女の顔はどんどん強張っていく。

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