冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
第一章 お堅い秘書と冷徹社長


社員の間で「アンドロイド秘書」と言われていることは、神谷澪(かみやみお)も知っていた。それはきっと不愛想であまり感情を表にださないせいだろう。

どんなときも常に冷静沈着で、簡単には笑みを見せない。黒い髪をひとつにしばり、黒のスーツを着こなす澪は、身長160センチと女性にしては高め。目はクリっとして愛らしいが、その大きな目も眼鏡によって隠されている。そのせいか、どことなく近寄りがたい雰囲気がする。

今回新たに社長に就任した本郷匠馬(ほんごうたくま)も、澪の噂やあだなは小耳に挟んでいた。だがここまでクールで、堅い女性だとは思わなかったようだ。

「神谷です。どうぞよろしくお願いいたします」

二つ折りの定規を連想させるお辞儀で、デスクに座る匠馬に挨拶をする。匠馬はその所作の美しさに一瞬目を奪われつつも、言葉を返した。

「こちらこそ、よろしく」

匠馬は秘書は不要だと着任前こぼしていた。なぜならそんなものいなくても、スケジュール管理も、仕事もできると自信があったからだ。

だが現役を退いた前社長、本郷幸之助に、それでは神谷さんが可哀そうだと言われ、しぶしぶつけることにした。


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