冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
第三章 嫉妬と罠


パーティー当日。

澪はあのドレスを着用し、匠馬と一緒に会場である都内のホテルを訪れていた。

普段だったら絶対選ばないグレージュ色で、トップスにレースを贅沢に使用し、前後で長さを変えたフィッシュテールデザインで軽やかなロングプリーツスカート。デコルテと袖のシアーな透け感で大人っぽく、長めのプリーツスカートが、ちょっとした個性を演出している。

だが着なれないせいか、気恥ずかしくてなかなか足が進まない。入り口で躊躇する澪を匠馬が急かす。

「どうした。行くぞ」
「社長、やはり私にはこんな華やかなものは似合わなかったのでは」

だからなのか、さっきから通り過ぎていく人の視線が痛い。

「良く似合ってる。堂々としていればいい」

匠馬のお世辞は嬉しいが、これまで地味だ、不愛想だと言われ続けてきた澪には、恐れ多くて震えあがってしまいそう。

学生時代からクラスの隅でひっそりと本を読んでいるタイプだった。騒ぐことも群れることも苦手なため、こんな華やかな場所も、仕事だから来ているものの、普段は無縁。


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