冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
第五章 厳しい選択


日曜日、澪は約束通り、匠馬と都内のレストランを訪れていた。

店内には大水槽があり、それを見ながら食事ができる。水槽内にはいろんな種類の魚が泳いでいて、まるで水族館のようだった。幻想的でロマンチックな演出に澪も思わずため息が出た。

「素敵ですね」
「気に入ってもらえたならよかった」

匠馬が嬉しそうにワインを傾ける。澪もお酒を勧められたが、妊娠中にアルコールの摂取はダメだと知り、弱いからと断った。

同行の際もいつもお酒は飲まないし、変に思われることはないだろう。

「ネックレス、してこなかったんだな」
「あ、はい。すみません」
「なぜだ。気に入ったんじゃなかったのか?」

今度二人きりのときに見せてほしいと言っていた。匠馬は今日期待していたのかもしれない。

「貧乏性なもので」
「つけないと意味ないだろ。腐るものでもないが」

くくっと喉を転がし笑っている。彼はここに来た時から上機嫌だ。


< 92 / 158 >

この作品をシェア

pagetop