敏腕CEOは執愛で契約妻の初めてを暴きたい
恋人に振られた現場で、幼なじみにプロポーズされました
お昼過ぎに彼氏の前野さんと入店したカフェは、いつの間にか空席が目立つようになっていた。

腕時計に視線を落とすともう夕暮れ時で、ため息が漏れる。

一方的に別れを告げてきた前野さんが去ってから、どうやら私だけ時が止まっていたらしい。

前野さんとは交際二カ月だった。

まさかあんなひどい理由でいきなり振られるとは思わずに注文したいちごのショートケーキのスポンジは、一口も食べないまま乾き始めていた。

アイスティーは溶けた氷に薄まり、もう飲めたものじゃない。

――背後の席から声をかけられたのは、そんなときだ。

「美玖は男を見る目がない」

振り返ると、なぜかそこには幼なじみの希瀬仁くんがいた。

とっさに声を発せず口をあんぐり開けた私に、彼は無表情で漆黒の瞳を向ける。

仁くんは二十八歳の私より三歳年上の三十一歳で、私が生まれたときからの付き合いだ。

長身で端整な顔立ち、艶のある黒髪には清潔感があり、どこを取っても完璧な容姿をしている。

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