【短】アイ・ビー・ト
two




心臓が、ドクン、と跳ねた。





「あ、影野(カゲノ)さん、お願いできる?」

「はい、いいですよ。ちょうど今空いたので」



駅の近くにあるネイルサロン。
やっと予約の取れた人気店。


そこで、俺はなぜか、後悔した。



「彼女、新人だけど腕は確かなのよ。安心してね。マナーはよくないかもしれないけど」

「ちょっと店長ー!」

「あら聞こえちゃった? ふふっ」



一度面識のある店長は、上品に笑いながら、俺を個室へうながした。



半個室の室内。
白いテーブルをはさんで、同じ色の、同じ木のイスがふたつ。


俺の目の前、近い距離には、影野という女性。



高橋(タカハシ)……えっと」

(マユ)です」

「ああそう、高橋 繭くん、ね。今回がはじめて?」



はじめて、目が合って。

心臓が、また、ドクンと跳ねる。


はじめてです、と口に出してみれば、一段と脈が乱れていく。



「高3なんだね、君」

「え、なんで知って?」

「コレ」



ひらりと白い紙を見せられた。

ああ、なんだ、びっくりした。最初に書いたアンケートみたいな、診断みたいなやつか。



「ま、知ってたけどね」

「えっ」



「君、有名だもん。

――悪い子の、高橋くん」



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