俺がお前を夢の舞台へ

恋心-勇翔side-

【勇翔side】


“もう、やめようよ…”

“蒼空も勇翔も、お互いに関わるのやめな…?”

“その方が平和だよ…”

“悲しいけどさ…”


彩絢の悲しそうな顔が空に浮かんでは消えるを繰り返す。


「寒…」 


昼間とはいえ、真冬の屋上で寝転がっていると凍えそうだ。


でも今はそれでいい。




俺は昔から彩絢のことが好きだった。


それと同時に、蒼空には敵わないとも思っていた。


その思いはどちらも変わらない。


だけど。


いや、だからこそ。


野球を辞め、夢を捨てた今の俺を見てほしくない。


俺に関わらないでほしい。


そう思って彩絢を遠ざけてしまう。


彩絢に申し訳ない気持ちもあるけど、それ以上に自分のプライドが大切なんだ。


「情けなねー男だよ俺は…」


好きな女の顔が浮かぶ空を見たくなく、そっと目を閉じる。


脳裏には、彩絢の泣き出しそうな顔が浮かび続けていた。
< 68 / 434 >

この作品をシェア

pagetop