僕が愛した歌姫
退院日程
結局、俺はその夜リナに会わずじまいだった。


リナはまたあの場所で待ってるかもしれないと思ったが、色々と考えすぎて気がつけば朝になっていた。


起床時間を知らせる音楽が鳴り始めて、やっと俺の果てしない妄想世界の思考回路は止まった。


「退院の日程が決まりましたよ」


俺を担当してくれているナース、鳥越さんがそう言って来たのは昼前のことだった。


「退院……?」


相当なアホ面をして聞き返してしまったらしい、鳥越ナースは俺の顔を見て必死で笑いをかみ殺している。


「はい。リハビリも順調ですし、もう日常生活に支障はないようですよ。よかったですね」


そう言って、今まで見せたことのない笑顔を見せる。


しかし、俺はその言葉をうまく噛み砕いて行くことができない。


相変わらず足は吊るされているし、動かない。


リハビリも、毎日同じような事を繰り返しているだけだった。
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