聖夜に身ごもったら、冷徹御曹司が溺甘な旦那様になりました
プロローグ
 正月気分もようやく抜けてきた一月中旬。玲奈は一生縁がないと思っていた場所、産婦人科の診察室のなかにいた。

「陽性反応が出ていますね。おめでたですよ」

中年の男性医師にのんびりとした口調で告げられ、玲奈の頭は一瞬で真っ白になる。

「陽性? おめでた?」

 彼の言葉をオウム返しにつぶやいてみたが、脳が理解を拒んでいる。

(私が妊娠? あるはずないじゃない、そんなこと!)

 玲奈は訝しげに医師の顔をのぞきこむ。

「あの、検査結果を取り違えていると思うのですが」

 すると穏やかそうだった医師の表情が険しくなった。失礼な患者だと言いたげな目で、ちらりと玲奈を見る。それでも、彼はもう一度手元の資料を確認してくれた。

「芦原玲奈さん、二十七歳。間違いないですよね?」

 玲奈がうなずくと、彼はそれ見たことかという顔をした。
 
 診察室を出た玲奈は愕然と立ち尽くした。 

(私ってマリア様だったのかしら?)

 二十七歳、一応処女ではないが……ここ数年は綺麗さっぱりご無沙汰だった。清い身体だと自信を持って宣言できる。その自分がなぜ妊娠を告げられたのか、玲奈にはまったく理解できなかった。
 ふと隣に目を向ければ、お腹の大きな女性とその夫と思われる男性が幸せそうに笑い合っている。自分のあまりの場違い感に、玲奈はそそくさと隅に移動した。
 会計を済ませて、エントランスを出る。会計を待つ間にもずっと記憶をたどっていたのだが、やはりどう考えても思い当たる節はない。
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