幼馴染 × 社長 × スパダリ
約束
やっと仕事を終えて、私はとぼとぼと家に向って歩いていた。
とぼとぼと言うよりもヨロヨロという感じかもしれない。
今日はいろんなことがありすぎて、精神的にも肉体的にも疲労困憊という感じだ。
「…はぁ~…」
大きなため息が出る。
それにしても、涼ちゃんはなぜあんな嘘を思いついたのだろうか。
冗談にしても酷すぎる。
あんなことを皆に宣言したら、もう後には引けそうもない。
どうするつもりなのだろうか。
私はこれからどうなってしまうのだろう。
さらに大きなため息が出る。「…はぁ~」
すると、後ろから車のクラクションが聞こえた。
車は私のすぐ横で止まった。
ピカピカに磨かれたボディーの、白い高級車だ。
車の窓がゆっくりと開き、中から声が聞こえた。
「萌絵、お疲れ様…車に乗れよ。」
車から顔を出したのは、涼ちゃんだ。
「二階堂社長、乗りません…失礼します。」
私は逃げるように歩き出すが、後ろから追いかけて来た涼ちゃんに腕を掴まれた。
「萌絵、待ってくれよ…怒っているのか?」
怒っているに決まっている。
涼ちゃんのせいで、今日は散々な一日だった。
「涼ちゃん!怒るのは当たり前でしょ。なんで私のことを結婚を決めた女性なんて言ったの?意味が分かんない…」
涼ちゃんはクスッと笑った。
「なんで?それは俺が萌絵と結婚しようと思ったからに決まっているだろ。」
「--------------------」
言葉が出てこない。
涼ちゃんは意味を分かって言っているのだろうか?
「…萌絵、小さい頃に言ってたよな…俺と結婚したいって…」
「---------っえ?」
「------------大きくなったら涼ちゃんのお嫁さんになるんだって…」
「…そ…それは…子供の時でしょ!」
確かにまだ幼稚園くらいの頃、涼ちゃんのお嫁さんになりと、言ったような記憶は確かにある。
しかし、幼稚園の時の話だ…
「俺は約束しただろ…萌絵をお嫁さんにするって…だから約束を守りたいんだ。」
「…うそでしょ!」
「俺は本気だよ…萌絵…約束しただろ…」
「涼ちゃん、そんな約束は守ってくれなくてもいいよ…子供の頃の約束なんて…」
涼ちゃんが、子供の頃の私の言葉を覚えていてくれたことにも驚いた。
まさか、その約束を守ってくれるなんてありえないことだ。
今の涼ちゃんは、アイドルも夢中になるほどモテる男性だ。
私なんかと結婚しなくても、素敵な女性を選び放題のはず…
黙っていても女性が寄ってくるだろう。
「涼ちゃん、無理しなくていいよ…」
何故か自分でも分からないが、涙が出て来た。
覚えてくれていたことは嬉しいが、今の涼ちゃんと私とでは全く釣り合わない。
それくらいは自分でも分かっている。