離婚するので、どうぞお構いなく~冷徹御曹司が激甘パパになるまで~

バカバカしい結婚 side黎人

▼バカバカしい結婚 side黎人

 血筋を求めて結婚させられるなんて、バカバカしい。それが俺の本音だった。
 一番最初に婚約相手を言い渡されたのは、丁度俺が二十七歳の時。
 今から五年も前のことだった。

 相手は葉山家の誰かだと想像はついていたが、当時まだ大学生だった“花音”が選ばれるとは思ってもみなかった。
「葉山花音と申します。よろしくお願い致します」
 初めての食事会で、彼女は水色の綺麗な着物に身を包み、父親の隣にちょこんと居心地悪そうに座っていた。
 俺はそんな彼女の様子を心配しながらも、同じように挨拶を返す。
「三鷹黎人です。いつも美しいお花をありがとうございます」
 花音とは、幼い頃に数回パーティーで出くわしていたが、正直あまり記憶には残っておらず、大人しそうだな、というざっくりした印象しか持ち合わせていない。
 家元の弟の娘に、自分と年の近い女性がいると聞いていたため、花音ではなくそちらの女性と婚約を交わすものだとすっかり思い込んでいた。
 それがまさか、家元直々の娘との縁談だなんて、寝耳に水だ。
 花音の父の話によると、花音は幼いころから真面目に華道と向き合い、長女として葉山家を継ぐ覚悟をしてきたとか。
 そんな意思の強そうな、自立できている彼女が、どうしてこの古めかしいしきたりに反対せず結婚を受け入れようとしているのか――。全く分からない。
「まあまだ、本格的なお話は先になるでしょう。黎人君も、時間をかけてゆっくり考えてみてくれ」
 優しそうな花音の父の言葉に、少しだけ強張っていた表情がほぐれる。
 しかし、すかさず自分の両親が、「家族になれる日が待ち遠しいです」と、俺の意思を無視して言葉を返す。
 でも、そんな勝手な両親を見ても、今さら何も感じなかった。
 それどころか、文化人の血筋をやたらと欲しがる自分の両親よりも、古いしきたりに縛られている花音になぜか腹が立った。
 七つも上の見知らぬ男との結婚を、本気で進めようとしているのか。
 自分の人生を捨ててまで、一族の言いなりになろうとしているのか。
 ――そんな怒りを払拭できないまま、その五年後に俺たちは籍を入れることとなる。
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