妊娠前提マリアージュ~強面の海運王の身ごもり妻、赤ちゃんの誕生日が二人の離婚予定日~
俺は彼女を抱き上げ、『プラチナ』を出た。

向かった先は俺が一人で泊まろうとリザーブしたスィートルーム。
俺が今まで見て来た彼女はほんの一部分。

こんな風にドレスアップして、オトコを漁りに来てたなんて、騙された気分だ。

「正…史さん・・・」

彼女は寝言でハッキリと正史の名を呟いた。

美晴さんも正史のコトを。

誰にでも優しい正史。

俺は高校時代、何度も正史に恋する女子生徒たちを見て来た。

強面の俺に女は近づいて来なかったが、正史はいつも女に囲まれていた。
正史には雪美は居ると言うのに。
皆が正史に恋焦がれていた。

「君も正史のような優男がいいのか…」

正史と対照的な俺は彼女のタイプじゃない。

―――でも、俺が君の夫だ・・・

俺の心の中にストンと黒い塊が落ちた。その塊は強い独占欲。

俺は美晴さんにだけは俺を見て欲しかった。

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