若旦那の恋は千鳥足
(わっ、どうして?)



カフェは、思いがけず混んでいた。



(えー……平日なのに、なんで?)



私の頭の中では、ロイヤルミルクティーとアップルパイはもうすでに決まったことで、今更、他のものを食べる気にはなれなかった。



(あ!)



奥の方にひとつだけ、空いた席をみつけ、私は逸る気持ちでそこに向かった。
良かった。これで、アップルパイが食べられる。
私の顔に、思わず笑みが浮かんだ。



「え!?」



その笑顔が、急に強ばったものに変わった。
なぜなら、私がそこに着いたのと同時に、向かいの椅子を引いた人がいたから。
その人は、何も言わず、その椅子に腰掛けた。



「あ…え…えっと……」

「……どうぞ。」

「え!?」



良く見れば、その人はすごく整った顔をしていた。
こんなに素敵な人だったなんて…
しかも、今「どうぞ。」って、言ったよね?
それって、この席に座って良いよってことだよね?
マジ?本当に良いの?



「……座らないの?」

「い、いえ。で、では、お言葉に甘えて…」

良かった。やっぱり、私の勘違いじゃなかった。
本当に相席してくれたんだ。
相席なんて今までしたことないから、緊張するけど、とにかくこのお店に入りたかったし、相手もこんな素敵な人なら文句はない。
私はおずおずと、席に着いた。

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