天空の姫Ⅰ ~二人の皇子に愛された娘~

死の病

---------------------------------------


玲心の薬をもらってからは体調はすこぶるよくなった。


玲心はたまに私の元へきてお茶を飲む。もちろん紅蓮には内緒だ。


「ふふっ」

「何をにやけている」

「別にー」

「おい。教えろ。」


虹彩樹の庭で紅蓮と過ごしながら私は幸せを噛みしめていた。

父上にも兄上にも気軽に会えて紅蓮も隣にいる。

毎日が幸せだった。


「何か足りないものはないか。欲しいものは?」

「ないわ」

「本当か?」

「本当だってー」


紅蓮に抱かれながら花を眺め平和な会話を楽しむ。


「あっ!一つだけあるわ」

「なんだ?」

「私、翼で空を飛びたい!」


八咫烏一族にいたときはよく飛んでいた。兄上を置いて行ってよく文句を言われたわ。


私はそんな時間が好きだった。魔界に来てからは一回も真の姿で飛べていない。




< 202 / 276 >

この作品をシェア

pagetop