スパダリ外交官からの攫われ婚
「何だよ、あんたもそんな風に笑えるんじゃないか」
「え?」
加瀬にそう言われて琴は自分が長い間作り笑いしかしてなかったことに気付く。こんな風に自然と笑えたのは本当に久しぶりの事だった。
そうさせてくれたのが、まさか加瀬だなんて彼女は思いもしなかったが。
――このために私を攫うだなんてお芝居をしてくれたのね、加瀬さんは。やっぱりこの人って凄くお節介な人なんだわ。
そう考えると綺麗で冷たい印象の加瀬が可愛く見えてくるから不思議だ。琴はそんな加瀬に対してクスクスと笑いを止められずにいた。
「後の事は任せていいか、優造さん」
「はい、美菜さんの事もこの見合いの事も僕が責任もって話をさせてもらいます」
優しい優造は美菜の裏切りに傷ついていたようだが、加瀬の言葉に顔を上げしっかりとした口調でそう返事をした。そんな二人の様子に安心した琴は、そろそろ降ろしてもらおうと加瀬の腕の中でもがく。
すると加瀬は腕の力を強めて、琴を逃げられないようにする。そんな加瀬に戸惑った琴は……