スパダリ外交官からの攫われ婚
少しだけ期待してしてしまったのかもしれない、そんな琴の想像とは違い加瀬の唇が触れたの彼女の柔らかな頬だった。
それでも加瀬の唇から伝わる彼の温度に胸のドキドキは大きくなるばかりで……一瞬で終わるキスのはずが琴にはずいぶん長く感じられた。
誓いのキスが終わり、加瀬が離れていくことを少しだけ残念に感じるのは何故なのか。そんなふわふわとした頭のまま、琴は牧師の宣言をぼんやりと聞いていた。
その後は讃美歌を聞き、二人はバージンロードを歩いて退場する。本当に夢でも見ているのかと思うほど、琴にとっては非現実な時間だった。
急な挙式だったため、披露宴はまたきちんと日を改めて行うつもりだと加瀬は話す。それなら自分の父も呼べるかもしれないと、琴は心から喜んだ。
「加瀬さん、ありがとうございます。本当に夢みたいな結婚式でした」
「そうか? 誓いのキスが頬で不満そうにも見えたがな」
そんな風に揶揄われて思わず加瀬の腕を叩いてみたが、あっさりと手首を掴まれ引き寄せられる。