スパダリ外交官からの攫われ婚
攫われて結婚初夜を迎えれば
「……また寝てるのか? 本当によく眠れるな、こんな所まで連れて来られたっていうのに」
呆れたような声が耳に入って、閉じていた琴の瞼が開く。いつの間にか眠ってしまっていたようで、彼女の前には沢山の紙袋と少し疲れた顔の加瀬が立っていた。
慌ててソファーの上で上半身を起こし、肩までずり下がってしまっていたシャツをなおす。そんな様子を見ていた加瀬が紙袋を一つ取り、そのまま琴に押し付けるように渡してきた。
「それに着替えて来い、いつまでもそんなだらしない恰好をされてたら迷惑だ」
「だらしないって、これを渡したのも志翔さんですけど……」
――サイズが違い過ぎるのだからこうなるのは仕方ないのに、そんな風に言わなくても。妻の私にもう少し優しい言い方って出来ないの?
そんな不満を感じる琴をその場において、加瀬はいくつかの紙袋を両手に下げるとさっさと奥の部屋へと運んでいく。
自分も手伝うと言ったが先に着替えろと言われ、そのまま浴室の脱衣所へと追いやられてしまった。
「うわあ、これを着るの……? 凄い、いくらくらいするんだろう?」
誰でもが知っている海外ブランドのワンピースだが、決して派手ではなく琴でも着れそうな可愛らしいデザインだ。
それでも今まで着る事の無かったような高価な服に、琴は少しだけ戸惑っていた。