フォンダンショコラな恋人
10.ごめんで済んだら弁護士はいらない
「陽平さんでも、妬くなんてあるんですね」

抱きとめられた陽平からは、いつもの草のような爽やかな香りがする。

「君は僕のことをどんな風に思っているのかな?」
陽平は翠咲をぬいぐるみのようにきゅっと抱き締めながら、まだ拗ねたような顔をしていた。

「えーと、怒ってますか?」
「僕はね、他の人にはどう思われてもいいよ。けど翠咲にだけは僕のことを分かってほしいし、翠咲だけが僕のことを分かってくれればそれでいいって思っている」

それは翠咲だけが理解者でいい、と言うそれは、翠咲にはひどく熱烈な言葉に聞こえた。
「ちょっとだけ拗ねていますね?」
「ちょっとだけね」
素直な陽平はなんだか、可愛い。

普段が無表情なだけに笑ったり拗ねたりするとこんな風なんだと思うし、それはきっと心を許した人にしか見せない姿なのだろうと思うと、胸がきゅんとする。

「ごめんね」
「そうだなあ……それを何かで表してくれたら機嫌が直るかも」

こんなこと、前にもあったような気がする。
その時は資料の整理をさせられたのだったか。
けれど、翠咲は今はそれではないような気がした。

「罪と罰は適正でなければいけないと思わないか?」
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