フォンダンショコラな恋人
14. おれおれって……詐欺ですか?」
事前からの警戒通り、日本列島を横断した台風は各地にかなりの被害を及ぼし、翠咲達はその対応に追われた。

電話も通常なら各課に直接つながるだけなのだが、今は台風被害の対応をしている火災新種課の電話も翠咲のところには回ってきている。

電話が鳴って、パソコンに引っ掛けてあるヘッドセットを装着しながら、翠咲は画面上で受信ボタンを押した。

「はい。火災新種課、宝条です」
『あ、翠咲か、ごめん外線から。俺、俺』
それは同期の北条の声だった。

「オレ、オレって……外線から詐欺みたいな電話してこないでくれる?」

受信番号は携帯だ。
ふふっとイヤホンからは笑い声が聞こえる。受電直後は硬い声だったが、力が抜けたようにも感じた。

『悪いな、忙しいのに。確認したいことがあって。今災害対応で現地に来ていて……』

本来なら営業担当者である北条なのだが、今は現地で被害に遭われている人たちのために、保険請求に必要な書類などの手配を現地でしているんだと言っていた。

一通《ひととお》りの話を聞くと、翠咲でも回答できる内容なので、説明してゆく。
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