フォンダンショコラな恋人
3.帰ります
その時だ。
「結衣ちゃん、うちの顧問弁護士知ってる?」
宝条の声が聞こえた。

──それって僕のことだろうか。

「はい。お若いですけど、ハキハキされてて、感じの良い方ですよね?」

ハキハキ……?
倉橋への他人からの評価と言えば、淡々としている、冷静、下手したらコミュ障一歩手前か?であり、まかり間違っても、ハキハキではない。
別人だな、それは。

「皆、感じ良いって言うんだけど、私にだけ感じ悪いのかしら」
あ、そうですか?
感じ悪くて悪かったな。

倉橋が斜め後ろにいるとも知らず、二人は会話を続けている。
「ん?感じ悪かったです?体育会っぽい人ですよね。がははって感じの」

がはは……。
間違いない。別人だ。
おそらくそれは、渡真利のことだろう。

「体育会?全然。むっちゃ、線の細い、どっちかって言うと理数系な感じ」
案の定、宝条は即座に否定している。

理数系。どちらかというと、それが普段の倉橋に対する表現だろう。
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