フォンダンショコラな恋人
6.黙秘します!
その後倉橋と顔を合わせることもなく、翠咲はいつも通りの生活を送っていた。

「会議行ってきます」
「はい。行ってらっしゃーい」

翠咲が自分の席を立ち、資料を手にエレベーター前で立っていたところ、ドアの開いたエレベーターの中に倉橋がいたのだ。

「あら、倉橋先生」
「どうも」
もしかしたら、前だったらエレベーター前で引き返していたかもしれないと思うと翠咲は少し笑える。

「何か、おかしいか?」
「いいえ」
気にせず乗り込めるのは、やはり一緒に食事をしたりして、少しだけ親しくなったからかもしれない。

「この前はありがとうございました」
「いや」
相変わらず、言葉も少なく表情も薄い。

けど、これが倉橋なのだと分かっているから。
そうしたら、倉橋から声をかけられたのだ。

「あの……資料室って分かるか?」
「もちろん。資料がいるんですか?」
倉橋はこくりと頷く。

翠咲は時計を見た。
ま、少し早めに出たから、案内しても問題はないわね。
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