『おじゃまします』

「やり直し」

『ええ?』

「自分の家におじゃましますはおかしいだろ」

『あっ、そうだね。……ただいま』

「うん、そうだな」

優しく頭を撫でられると、先に中に入るように促される

今日から、彼の家が私たちの家になる

初めて来た三年前には、ここで結婚生活をスタートさせることになるなんてほんの僅かにも思わなかった

彼が並べてくれるペアスリッパは、私が職場の近くのお店で買ってきたもの

ウール100%素材で保温性に優れていて、寒い冬の間にも足元を暖かく保ってくれる

「寒いだろ?すぐ暖房入れるからな」

『大丈夫だよ、ありがとう』

彼と一緒だからなのかもしれないけれど、そんなに寒さを感じない

彼と付き合う一年前、真冬のOB会で注意を受けたことが懐かしい

「男の前で人肌恋しくなるなんて絶対言ったらだめだぞ そんな切ない感じで言うのが余計よくない」 

あの頃、彼が温めて抱きしめてくれるのなら、どんなに寒い場所でも生きていける気がすると本気で思っていた 


『ともくん、たぶんね、私はともくんが一緒にいてくれるだけで暖かい気がする』

「あはは。暖かいポジション維持できるように努力するよ。度を越えて暑苦しいって言われないようにな」

『そんなこと言わないよ……』