辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する

第六話 贈り物

■ 第六話 贈り物

 そろそろ、サリーシャがここへ来て二ヶ月が経つ。アハマスでの生活はとても穏やかだった。

 屋敷ですれ違う人達は皆、サリーシャを歓迎して笑顔を浮かべる。使用人の子ども達はサリーシャのことを見かけると、早くも「奥様」と呼んでこぞって手を振ってくれた。彼等をみていると、この貴族の社会に入ってからずっと張りつめていた空気が、ふっと緩むのを感じる。

 ──ここの人は、皆、いい人ばかりだわ。

 サリーシャはいつもそう思う。

 田舎の村からマオーニ伯爵邸に連れられてきて以来、サリーシャにとっての上流社会とは、あまり楽しい世界ではなかった。

 家庭教師による厳しいレッスンでは、上手にできる事を当たり前のように求められた。その日の出来具合は全てマオーニ伯爵に報告されるので、少しでも失敗すると厳しく叱責された。
 同じ年頃のご令嬢はみな、ライバルだと思えと教えられた。フィリップ殿下の横に立つ邪魔をする敵だと。そのため、仲の良いお友達もいなかった。大抵のご令嬢は幼いころからの幼馴染のご令嬢や親せきのご令嬢同士で仲良くなるようなのだが、サリーシャにはそれも居なかった。
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