政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
訪れた幸せと募る不安
 ボウルに卵を割って入れ、出汁とみじん切りにした葱を加えて素早くかき混ぜる。次に温めておいた玉子焼き専用のフライパンに少しずつ流して焼けば、厚焼き玉子が出来上がった。

「うん、今日もうまくできた」

 切ってみると断面も綺麗で美味しそうだ。

 ベーコンのアスパラ巻きや温野菜サラダ、それと昨日作ったかぼちゃの煮物などを、バランスよく弁当箱に詰めていく。

 時間を確認すると、あと五分で六時になろうとしていた。そろそろ航君を起こさないと。

 残りのおかずを急いで詰めて片づけをし、寝室へと向かう。

 航君と結婚して一ヵ月。アルバイトも辞めて専業主婦としての日常に慣れつつある今日この頃。

 そっと寝室に入り、ベッドへと歩み寄る。すると航君は規則正しい寝息を立てて眠っていた。

 普段はカッコいい彼も寝顔は可愛い。ひざを折ってスヤスヤと眠る彼を覗き見る。

 仕事に行く時はしっかりとセットされている前髪も、寝癖がついていて立っていた。それがなんだか可笑しくて笑ってしまう。

 こうして一緒に暮らし始めてから、彼の新たな一面をたくさん知ることができた。

 朝は弱くてなかなか起きられないとか、料理は得意なのに、洗濯物を畳むのが下手とか、バラエティー番組が好きで芸人に詳しいとか。

 些細な一面を知るたびに嬉しくて、そしてもっと好きになっている。
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