政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
新婚初夜に愛を宿す
 結婚を決めた私たちは、すぐに行動に出た。お互いの家族に報告をし、週末の土曜日の午後に彼は私とともに伯父の家を訪ねてくれた。

 伯父は終始渋い表情で私たちの話に耳を傾けていて、伯母は目を潤ませて何度も頷いている。

「本当によかったわね、千波ちゃん。こんなに素敵な人と一緒になれて」

「ありがとうございます」

 伯母も伯父とともにずっと私と瑠璃の力になってくれていた。金銭的な面ではもちろんのこと、精神的な面でもだ。

 頻繁に連絡をくれて、時には他愛ない話をしては、私と瑠璃の心を和ませてくれていた。伯父夫婦には子供はおらず、私と瑠璃のことをふたりは本当の娘のように接してくれている。

 いつか絶対に伯父と伯母にも恩返しがしたいと思っていたから、こうして愛のない結婚の報告をすることに、申し訳なさを感じる。

「庵野さん、千波ちゃんは本当に優しくて素直でいい子なの。どうか幸せにしてあげてね」

 深く頭を下げて言う伯母に、チラッと隣に座る庵野さんを見る。

 私たちは結婚する。だけど普通の結婚とは少し違う。私と庵野さんの間に愛はないし、互いの利害が一致した結婚に過ぎない。

「はい、もちろんです。生涯かけて千波さんを幸せにします」

 それなのにこうして、さも私を愛しているかのような言葉を言わせていることに、罪悪感を抱いてしまう。

 それは伯父の家を訪ねてきた時からずっと感じていた。伯父と伯母に対して深々と頭を下げ、結婚の申し入れをしてくれたのだから。
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