猫と笑顔とミルクティー~あの雨の日に~
第一章
「こんにちは~!!」

ログハウスにとてもマッチしているステンドグラスがはめ込まれた入り口を、元気よく挨拶をしながら開ける。

カラン――、と言う鈴の音と、

「実森さん、いらっしゃい」

と言う三毛さんの渋くて低い声が出迎えてくれた。

「こんにちは、三毛さん。今日もステキなお声ですね」

そう言うと、三毛さんは照れながら「いやいや…」と手を振った。

私は、照れた顔もかわいいとニヤニヤしながら、初めてここを訪れた時に座ったカウンター席に腰を下ろす。

「アールも、こんにちは」

カウンターの、一番端の陽当たりが良い窓際。

そこにある、猫用ふかふかクッションの上で丸くなって寝ている黒い子猫に声をかけた。

私の声にアールは片目を開け、私の姿を確認すると面倒臭そうに尻尾をパタン…パタン…と動かした。

「つれないなぁ……」

あの時最初に助けたのは私なのに……。

溜め息を吐くと、三毛さんがクスッと笑いながらおしぼりを手渡してくれる。

「今日は何になさいますか?」

「……いつもので」

私は少しブーたれながらおしぼりを受け取った。

「かしこまりました」

三毛さんは、私が何を注文するのか最初から分かっていたのか、なんの躊躇もなく茶葉やお気に入りのカップを用意してくれる。

(なんか嬉しいなぁ)

お店の常連になるって、嬉しいものだね。

半年通い詰めただけの事はある。

(まあ私の場合、最初のインパクトが強烈だったんだろうけど……)

無駄のない動きをしながら紅茶を淹れてくれている三毛さんを、ボーっと眺めた。

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