関係に名前を付けたがらない私たち
2章

*ノストラダムス出てこいや

 大王だか大魔神だかに恐れおののいていた私は突然押し寄せる不安から悲しくなり、耕平に「もっと一緒にいたかった」とか「耕平に会えて幸せだった」とか、口にしてはめそめそ泣いた。

 7月を迎え、世間は海だ、祭りだ、花火だ、と賑やかなのに、私だけは世界の終わりが訪れたかのように暗い顔をしていた。

 ラウンジ勤務は続けていたけれど、なぜもうすぐ世界が終わるのにおっさん連中の相手をしなきゃいけないんだ、と仕事中に悲しくなったりもした。

「あいぼん、どうしたの」

 お客さんから気遣われ「もうすぐ世界が終わるじゃないですか」と、さも終わることが前提のような口調で話す私を見て、それはそれは盛大に笑われた。

「本気で信じてるの?」

「信じてますよ。だってベルリンの壁の崩壊も当てたんですよ」

 ベルリンの壁が何なのかすらよくわかっていないのにもっともらしいことを口にした。

 おじさん連中は「第二次世界大戦」とか「西ドイツ」とか「東ドイツ」とか、社会主義に軍事力、と上級者向けの話題で盛り上がりだした。

「まあ、ペレストロイカ政策は革命的だったな」

 さっぱり話に参加できない私はホステスとして失格もいいところだったけれど、そういう政治的な話じゃなくて、私が案じていたのはもっとオカルト的なことだった。
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