あの日溺れた海は、
2.真実はいつもひとつ
赤ペン先生の正体を探るなら、まず私たち部員以外で部室の鍵を借りている人がいないかおじいちゃんに聞くのが一番手っ取り早いと思った。

そこで借りている人がいればその人が赤ペン先生、という可能性が高くなる。


「部室の鍵?それまたどうして。」



その日の部活帰り、鍵を返すついでにおじいちゃんに聞いてみるとそう返事が返ってきた。
わたしは赤ペン先生の存在を話し、実際に原稿用紙を見せた。


おじいちゃんは目の前に差し出された原稿用紙を手に取ると、じっとその文字を見つめた。

それから眉を潜めて、少し目を見開いたかと思えば、首を傾げて、返ってきたのは期待外れの言葉だった。



「…ううん。分からないなあ。」


内心落胆しながらも「ありがとうございました。」と言って、目の前に戻された原稿用紙を受け取った。


「鍵も、僕に言わなくったって他の先生とかに借りたいって言えば借りれちゃうしなあ。」


「そう、なんですね。」

驚愕の事実に今度こそ文字通り肩を落とすと、「あ、でも、」とおじいちゃんは思い出したように言った。



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